声劇台本の盗作について著作権の専門家に聞いてみた

POLARIS(ポラリス)のりつゆ(ritsuyu7)です。

Twitterで見かけたことがある人も多いと思いますが、声劇台本が盗作されたり過度に改変される問題が起こっています

今回は「声劇台本の盗作が法的にどんな罪になり、そして、盗作された人はどんな対応をするのか」について専門家の方に話を聞いてきましたので、インタビュー形式で紹介します。

少し難しい話になりますが、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

回答してくれる方

reicoさん

はじめまして。reicoと申します。
現在、行政書士事務所を経営しております。

行政書士業務としても知的財産権関係を積極的に行なっております。(著作権登録、著作権関係契約作成とレビューなど)

法律関係経歴

  • 2012年行政書士登録・開業
  • 2級知的財産管理技能士
  • 宅地建物取引士登録
  • 法務博士

はじめに、インターネット上で他人の作品物を盗作するのは何罪になるのでしょうか?

他人の作品物(著作物)を盗作すると、『著作権等侵害の罪(著作権法(以下、「法」と記します。)119条1項。)及び著作者等人格権侵害の罪(119条2項1号)』に問われます。

どんな物が『作品物(著作物)』になるのでしょうか?

著作物とは

「思想または感情を創作的に表現した」

「文芸、学術、美術または音楽」

に属するものと法で定義されていますが、堅苦しく考える必要はありません。

たとえば、私たちがスマホで撮ったペットの写真も、"ペットを可愛く撮りたい" という感情の下に工夫して撮影しているのですから、立派な著作物といえます。

声劇台本も『作品物(著作物)』になりますか?

声劇の台本は作者の個性が表れる創作物ですから『言語著作物(法10条1項1号)』の中の『文書著作物』に含まれます。

したがって、無断盗用すると著作権侵害などの罪に問われることがあります。

さらに、声劇の台本を無断で上演すると著作者しか持たない上演権(法22条)の侵害になります。

また、作品の一部を勝手にアレンジしたり削除したりすると、著作物の同一性保持権(法20条)や翻案権(法27条)の侵害となることがあります。

盗作の定義について具体的に教えてください。

盗作とは、一般的に著作物をその著作者に無断で自分の作品として公表や公開することをいいます。

インターネット(ネット)上にも、ブログの文章、写真、イラスト、小説、音楽やダンスの動画など、ありとあらゆる著作物が溢れています。

ネットでは誰でも気軽にそれらを見たり聞いたりすることができますが、同時に作品のコピー&ペースト、いわゆる「コピペ」をして著作物を自分のサイトに持ってくることも簡単にできます。

しかし、コピペした著作物を自分の作品と表して公開することはもちろん、誰の作品かを明らかにしないまま公開することも著作権を侵害する行為となるので注意が必要です。

著作者には著作者人格権として、著作物に自分の名前を表示するかしないか、或いはペンネームなどを使用して公表するかなどを決定する権利(法19条)があります

盗作はこの名前部分を勝手に変更するのですから、著作者人格権を侵害する罪に問われるのです。

罪に問われるとどうなるのでしょう?

刑罰としては5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金(或いは両方)に処されます。

また、他人の作品をコピペしたものを大量にコピーして配ったり、それで利益を得たりした場合は著作権の侵害行為として、10年以下の懲役もしくは1000万以下の罰金(或いは両方)に処せられます。

重い罪になりますね…
実際に盗作を見つけたら、台本作者はどうしたらいいのでしょうか?

これら著作権侵害に関する罪は、権利を侵害された著作者からの告訴があって初めて成立する、いわゆる「親告罪」となります(法123条1項)。

侵害者に対し、その刑事罰を問いたいのであれば、もちろん告訴をし、捜査機関に処分を委ねるのが方法の一つです。

とはいえ、盗作に対しいきなり告訴するということは現実的ではありません。台本作者(以下「著作者」とします)が望むことは何より権利の侵害を止めること、そして侵害により損害が生じたのであれば、それを賠償してもらうことではないでしょうか

たしかにそうですね。では、具体的な方法を教えていただけますか?

はい。まずは個人間でできること、次に民事でできること、そして告訴の詳細の順に説明していきます。

個人間の話し合い

前述したように、今日(こんにち)のインターネット社会では著作権に対する知識のないまま、いわば無自覚に「盗作」をするケースが散見されます。

著作者は自分の作品がネット上などで盗作されているのを知ったときは、まずは侵害相手に連絡を取りましょう
相手方のサイトに問い合わせ機能があればそこから、SNSであればダイレクトメッセージ機能などを使います。

伝える内容の例

無断使用

「今使用している台本は自分の著作物で、無断での上演(配信)は認めていないので今すぐに止めて(削除して)ほしい」

盗作

「その台本の本当の作者は自分であり、しかるべき処置を取ってほしい」

相手側が悪質でなく、すぐに謝罪し、また上演をやめれば、目的の大部分は達成できるのではと思います。

ただ、著作者が台本の使用を有料で行っていた場合、上演期間が長期であれば使用料の問題が発生するかもしれません。そのあたり、SNS上だとどこまで込み入った話ができるかは相手次第となるでしょう。

無事示談に持ち込めれば晴れて問題解決です。

民事での差止めや損害賠償請求

話し合いによる問題解決ができなければ、次は民事上の解決を検討します。

ネット上での台本無断上演は著作権侵害行為にあたるので、著作者は侵害者に対して民事訴訟を起こし、その侵害の停止を請求することが法律上認められているのです(法112条1項)。

この請求は、現に行われている侵害(台本の無断使用)の停止を求められることはもちろん、侵害がまだ起こっていないが近い将来その恐れがあるとして、その予防を求めることの可能です。(侵害予防請求権といいます。)

具体的には、ある団体(または個人)がこれまでもネット上で何度か自分の台本を無断使用していて、それらの上演(配信)は終了しているものの、今後も無断使用が繰り返される可能性がある場合などがあげられます。

侵害停止請求と侵害予防請求を総称して侵害差止め請求といいます

侵害差止め請求と同時に損害賠償を請求することももちろん可能です。
損害賠償請求権の根拠は著作権法ではなく不法行為請求権(民法第709条)です。

すなわち、「故意または過失」により「他人の著作権を侵害することで」「損害を生じさせ」賠償責任を負うことになるのです。

侵害の故意がなくても責任が発生するのがポイントです。「自分のしていることが著作権侵害なんて知らなかった」という言い訳は効きません

「声劇」という著作物をネット上で公衆に向け演じている者(主催者が別にいれば主催者)は、その立場から当然著作権について調べておくべきであり、少なくとも過失が認められるといえます

台本の盗作や無断使用を行うことで発生する損害

積極的損害

侵害により自分の財産が減ること。例えば訴訟にかかった弁護士費用など。

消極的損害

侵害により本来得られるはずの利益がなかったこと。作品の使用料や出版していた場合の販売部数の減少など。

精神的損害

いわゆる慰謝料。

ネットでの盗作や無断使用はこの損害の主張が多くなります。

  • 著作者の名前を変更された(あるいは著作者名を載せない)
  • 自分の作品を変な風にアレンジ(翻案)された
  • 等々…

著作者人格権を侵害する行為により被った精神的苦痛に対し賠償責任が生じます。

話し合いで解決できるのが一番ですね…

そうですね…それでは、次は告訴の方法について説明します。

刑事(告訴)は民事の次の方法というのではなく、民事と同時に告訴することもできます。

告訴とは、告訴権者が捜査機関(最寄りの警察署の刑事課告訴係など)に対し、犯罪事実を告げて犯人の処罰を求めることをいいます。

著作権を侵害された著作者は被害者として告訴権者になります。

法律(刑事訴訟法)上は口頭でも告訴できるとありますが、いずれ必要になるのですからきちんと告訴状を準備しておきましょう。

台本の盗作や無断使用を行うことで発生する損害

告訴状に書くポイント

  • 告訴人(著作者)の住所氏名
  • 被告訴人(侵害者)の住所氏名(不明ならできる限り詳細な情報)
  • 罪名と侵害に至る経緯(著作権侵害の要件を充たす具体的事実を時系列に沿って丁寧に)
  • 証拠の内容(民事と同じ)
  • 提出先と作成日

告訴状を警察署が受理すれば告訴終了です。
(もっとも、捜査機関は内容に不備のない告訴状は原則受理しなければならないことになっていますが、実際には理由をつけてなかなか告訴状を受け取らないこともあるようです。)

どんなものが証拠資料になりますか?

著作権にかかわらず、損害賠償請求訴訟においては、侵害の事実と損害発生との因果関係を請求者(著作者)が証明しなければなりません。

すなわち問題になっている作品が「自分の」「著作物」であること、それを相手がどのように侵害していてどんな損害が発生したかを、具体的に証拠を用いて申述するのです。

著作権は特許や商標と違い、登録する必要はなく、著作物の作者に対して自然発生する権利です。

ですから作った台本を印刷して誰かに渡した事実があれば、少なくとも渡した日には著作権が発生していた証拠になります。

サイトにアップしたのであればアップロード日です。アーカイブで辿れるようにしておきましょう。

PC内のファイルはそのまま残しておき、改訂した場合は新たな名前で保存するようにします。

侵害の証拠はサイト内に著作があればスクリーンショットを取り、実演していればそれを別途撮影しておきます
侵害部分をダウンロードするのは一応違法行為なので控えた方が無難です。(証拠収集のためのやむを得ない行為として認められる可能性はありますが。)

損害額の根拠も必要ですが、慰謝料の算定は決まった基準がありません。

過去の裁判例などを参考にするか、弁護士など専門家に相談するようにしましょう。

なるほど…
ちなみに、告訴自体の費用はどれくらいになるのでしょうか?

告訴自体には費用はかかりません

刑事裁判になれば著作者は証言をすることはあってもあくまでも第三者となります。
その代わり仮に罰金刑が侵害者に科せられても、著作者へ還元されることはありません。

ただし、告訴状をきちんと受理してもらい、捜査をしてもらうために、弁護士などの専門家に告訴状作成を依頼したり、相談したりすればその費用はかかります

告訴状作成費用はあくまでも目安ですが弁護士で10万~30万、行政書士で5万~15万円くらいかかります

なお、弁護士名義での告訴状とするなら通常追加費用がかかります。

ちなみに告訴により起訴までいく割合は、やや古い統計ですが平成24年度は25.3%となっています。

しっかり対応してもらうには何がポイントになりますか?

いずれの方法を採るとしても、相手を特定できるかがポイントとなります。

サイトなどで情報が見つからなければ、「発信者情報開示請求」をサイトの運営者、もしくはプロパイダに対して行います。

任意での請求に相手が応じなければ裁判所に仮処分申請をします。

この場合も自分の「著作物」が相手によって「侵害」されていることをきちんと証明することが求められます

reicoさん、詳しく教えていただき、ありがとうございました。

\ 追記しました /

Twitterでいただいた意見

複数管理は面倒でも、いろんな台本投稿サイトに自分のアカウントを持っておくのも有効だと思う。

「私ではないアカウントが、私の作品を無断転載しています」とそのサイトで通報しやすい。

最後に

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

なかなか難しい話だったと思いますが、要するに "盗作や過度の改変はやめましょう" ということです。
マナーを守って遊べば声劇は楽しいものですから!

りつゆ
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台本師さんへ

素敵な作品を、ありがとうございます。
いつも楽しく声劇をさせていただいています。

私は物語は書けませんが、こういった記事の文章は今までたくさん書いてきています。
そして、台本師さんと同じように盗作被害にあってきました

悲しいですが、盗作という行為はなくなりません

なので、盗作されないように対策することも大事だと思います。

専門家の話にもあったとおり、盗作を証明するには証拠が必要です。

私の今までの経験上、証拠をしっかり残すためにも、台本師さんは個人のホームページに台本を公開することをおすすめします

ここで言う "個人のホームページ" というのは『Wix・FC2ブログ・Jimdo』などの無料で作れるものではなく、自分でドメインとサーバーを契約して解説するもののことです。

なぜなら、証拠を取得するのに運営会社に問い合わせする必要があったり、盗作されないための対策(コピペ防止機能など)ができなかったりするからです。

ホームページを運用するのにお金がかかったり、操作が難しかったりするので、なかなか手が出しづらいかもしれません…

ですが、自分の大切な作品を他の人に不正に使われないためにも、ぜひ個人のホームページ作成を検討してみてください!

わからないことがあればいつでも相談にのりますので、TwitterにDMしていただければと思います。

  • この記事を書いた人
りつゆ

りつゆ

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