ネットで音楽に関わる活動をするのであれば、切っても切れないのが著作権の問題です。
自分で曲を作る場合はもちろん、他の人の作った曲を使うのであれば、これを知っておかないと思わぬトラブルに繋がることもあります。
今回はnanaを正しく楽しむための著作権とその具体的なルールについてわかりやすく説明していきます。
そもそも著作権ってなんだろう
nanaのお話をする前に著作権について簡単に知っておきましょう。
著作権とは “ある人が自分の考えや感情を創作的に表現したものを作ったときに、その人に与えられる権利” のことを言います。
たとえば、僕が口笛で適当に思いついたフレーズを吹いただけでも その音楽には著作権が発生します。
[box01 title=”ポイント”]
著作物… | 自分の考えや感情を創作的に表現した “もの” |
---|---|
著作者… | 著作物を作った “人” |
著作権… | 著作物を作った人に法律で与えられる “権利” |
[/box01]
そして著作権法とは “著作権者の努力によって生み出された著作物が、勝手に使われたりしないように守るための法律” です。
自分が頑張って作った作品を勝手に使われたり改変されてしまったら、次の作品を作ろうという創作意欲が失われちゃいますよね。これは作品を作るという文化を衰退させることにも繋がります。
あと、作品を作って生計を立てている人は、勝手に自分の作品を使われてお金儲けをされてしまったら生活ができなくなってしまいます。創作する人や、文化そのものを守るために著作権法っていう法律が必要になるんです。
nanaを楽しむ時に守らないといけないルール
nanaでは他の人が作った曲を歌ったり、演奏したりすることがよくありますよね。つまり、nanaでは著作権が深く関わってきます。
まずは、nanaの公式が発表している内容を見ていきましょう。
【運営からのお願い】投稿ルールを守りましょう~nanaで投稿していい曲ダメな曲~
https://nana-music.com/blogs/20160413-01/
nanaの投稿に関する良い悪いまとめ
OKな投稿
- オリジナルの楽曲を自身で演奏したもの
- モノマネやトーク
- JASRAC/NexToneが著作権を管理している楽曲を自身で歌ったもの
NGな投稿
- CD/DVD、iTunes/着うたなどの音楽をそのまま録音したもの
- CD/DVD、iTunes/着うたなどの音楽に合わせて自身で歌ったもの
- カラオケ音源をそのまま録音したもの
- カラオケをバックに自身で歌ったもの
- JASRAC/NexTone管理外のオリジナル以外の楽曲を自身で演奏や歌ったもの
- ネット上で見つけたファイルを使って録音したもの
- 他の人が制作した作品をそのまま録音したもの
nanaの投稿のOK・NGの基準
「じゃあOKとNGの基準は何なの?」と思う方が多いと思うので、詳しく説明していきますね。
まず
- オリジナルの楽曲を自身で演奏したもの
- モノマネやトーク
についてです。
自分で1から作品を作る場合は自分に著作権がありますのでnanaでどのように使用しても大丈夫です。
次に
- JASRAC/NexToneが著作権を管理している楽曲を自身で歌ったもの
- JASRAC/NexToneが著作権を管理している楽曲を自身で演奏したもの
とあります。
『JASRAC/NexTone』と難しい言葉が出てきましたが心配いりません。JASRACやNexToneというのは著作権を管理している組織の名前です。
たとえば私が音楽を作ったとして、その曲を他の人が使いたいと思ったら私に許可を取る必要があります。
でも、もしその曲が有名になって毎日100人から「橋下さんの曲使いたいんですけど許可くれませんか?」とメールが来たらどうでしょう。
すごい返信が大変ですよね。
そうした時にとても助かるのが著作権を管理してくれる団体です。
JASRACやNexToneなどの著作権管理団体は、僕の作った曲の著作権を代わりに管理してくれます。
それでは、なぜJASRACやNexToneが管理している楽曲は許可を取らずにnanaで歌ったり演奏してもよいのでしょうか?
これは、nanaと著作権管理団体が著作権に関する包括的な契約を結んでいるからです。
簡単に言うと、nanaが僕たちの代わりに、著作権管理団体に楽曲の使用許可をあらかじめ取ってくれているんです。
つまり、JASRACやNexToneが管理している楽曲は許可を取らずにnanaで歌ったり、演奏したりできるんです。
[chat face=”hashimoto_icon_1-1.png” name=”橋下” align=”right” border=”yellow” bg=”yellow”]でもちょっとまって!ここが大事[/chat]
「代わりに著作権とかの許可を取ってくれているなら、CDをそのまま投稿したり、カラオケで歌ったものを投稿してもOKだよね?」
実はこれ、ダメなんです。
確かに、nanaと著作権管理団体は「音楽を使っていいよ!」という契約をしているのですが、これには大きな落とし穴があります。
これは、“曲を作った人の権利と、CDやカラオケの音源を作った人の権利は分けて考えないといけない” というルールがあるからです。
CDやカラオケの音源を作った人が持つ権利を『原盤権(げんばんけん)』と言います。
音楽作品を作る時は音楽を考えた人だけではなく、それを録音したりMIXなどの編集作業をして音源を作った人がいます。
この “音楽を音源という形にする作業をした人” に原盤権という権利があるんです。
そしてこの原盤権は『著作権管理団体』が管理していない権利になるんです。
↑すごい重要
つまり、お店で売っているCDやカラオケの音源を使ってnanaで歌うことは原盤権の侵害になってしまいます。
では、原盤権を侵害せずに著作権管理団体が管理している曲を歌うにはどうしたらよいのでしょうか?
- 自分で作ったカラオケ音源を使って歌を投稿する
- nanaで演奏者さんが演奏した伴奏にコラボ機能で自分の声をのせる
- 原盤権を持っている人に許可をもらって歌を投稿する
という方法があります。
残念ながら『原盤権を持っている人に許可をもらって歌を投稿する』という方法はかなりハードルが高いです。
なぜかというと、原盤権を管理している大手レーベルや音楽出版社のほとんどは、個人に対して原曲の音源を使った二次創作物のネットへのアップロードを認めていないからです。
しかし、nanaで人気のボカロ曲の場合、まだ望みはあります。
なぜかというと、ボカロ曲を作るボカロPさんは自分で音源を作るケースが多いからです。
自分で音源を作るということは、原盤権もボカロPさん本人にあります。
つまり、ボカロPさんに直接「このカラオケ音源つかっていいですか」と連絡をして許可もらうことができれば、たとえ他の人の作った音源だとしてもnanaに投稿することは可能です。
さて、お気づきの方も多いかと思いますが、NGな投稿は上で説明した原盤権の問題でほとんど説明ができます。
- CD/DVD、iTunes/着うたなどの音楽をそのまま録音したもの
- CD/DVD、iTunes/着うたなどの音楽に合わせて自身で歌ったもの
→音楽をそのままnanaで投稿することはもちろん、それに被せて歌うことも原盤権を侵害になってしまいます。CD/DVD、iTunes/着うたの場合、原盤権は多くが音楽レーベル、音楽出版社によって管理されています。
- カラオケ音源をそのまま録音したもの
- カラオケをバックに自身で歌ったもの
→僕たちがよく利用するカラオケボックスの音源をよく聞いてみると、CDなどに収録されている原曲と違うことがありますよね。これは、カラオケボックスの運営会社が、原曲とは別のカラオケ音源を自分たちで用意しているからなんです。
もちろん、これらの音源の原盤権は、カラオケボックスの運営会社や音源を制作した別の会社が管理しています。
つまり、カラオケボックスで流れる音源を録音したり、それをバックに歌うことは原盤権の侵害になってしまうんです。
- ネット上で見つけたファイルを使って録音したもの
- 他の人が制作した作品をそのまま録音したもの
→曲を考えた人、音源を作った人の許可を取らずに投稿することはもちろんNGです。
たとえ有名じゃない曲だったとしても、どんな曲にも基本的に著作権は存在します。
これらの楽曲を使用したサウンドをどうしても投稿したい場合は、権利者本人に直接許可をとりましょう。
さて、最後に一つ残りました。
- JASRAC/NexTone管理外のオリジナル以外の楽曲を自身で演奏や歌ったもの
→著作権管理団体が管理していない楽曲は、たとえ伴奏をそのまま使ってなくても、歌ったり演奏したものを投稿するのはNGです。このケースも同様に、権利者に許可をとればnanaで投稿しても問題ありません。
※原盤権とは、著作隣接権の一つになります。著作権と著作隣接権は厳密にはことなりますが、広い意味で著作権として扱う場合が多いです。
※著作権法では保護期間の規定で著作権が消滅する場合や、その他例外も細かく決まっています。
よく話題になる違法音源ってなに?
違法音源というのは、簡単に言うと、「曲を作った人の権利を侵害している音源」になります。
nanaをしていると、ボカロ曲のカラオケがそのまま投稿されているのを見かけたことはありませんか?
これは、その曲を作ったボカロPさんがnanaに投稿しているのであれば問題はないのですが、もし本人以外のアカウントで投稿されていたら、それは違法音源である可能性が極めて高いです。多くのボカロPさんは「カラオケ音源の二次配布」を認めていません。詳しく説明すると、先程上で説明した原盤権には、複製権と送信可能化権という規定があり、権利者に許可なく音源を複製したり、第三者が聴ける状態にすることは違法になります。
たとえネット上で配布されている音源であっても、勝手に別の人がnanaに投稿することが違法になるのはこうした理由があります。
[chat face=”hashimoto_icon_1-1.png” name=”橋下” align=”right” border=”yellow” bg=”yellow”]ここが大事![/chat]
nanaにはコラボ機能がありますから、もし無断転載された違法音源とコラボしまうと、コラボしたユーザー自身も違法音源を作り出してしまうことになります!
[box01 title=”ポイント”]
- 曲の権利を持つボカロPさん本人がnanaに投稿したカラオケ音源であれば、原曲と同じカラオケ音源でもコラボが可能です
nanaでボカロ曲を歌う際は、無断転載のサウンドにコラボしないよう気をつけましょう。
- 弾き語りアレンジやDTMで本家そっくりに作られたサウンドであればコラボしても大丈夫です
(ただし、そのボカロ曲が著作権管理団体に登録されていない場合は、ボカロPさんに楽曲の使用許可を取る必要がある)
[/box01]
ボカロPさん自身が投稿している場合は、本家のカラオケ音源であってもコラボは問題ありません。
nanaで違法音源を見つけたら?
違法音源とコラボしてしまうと被害を広げてしまうことになります。
そのため、nanaでは違法音源を報告することができます。
ここではnanaで違法音源を報告する方法を説明します。
操作方法を説明するために画像を使っていますが、画像の音源は違法音源ではありません
- サウンドの画面で『』ボタンをタップします
- 『問題を報告』ボタンをタップします
- 違反報告フォームが表示されますので、状況を書いて『確認画面へ』ボタンをタップし、送信をしましょう
nanaにMIX済みの歌ってみたを投稿したい!
nanaにはニコニコ動画やYouTubeに歌ってみた動画を投稿されている歌い手の方も多くいらっしゃると思います。
そういった方は「ネットでボカロPさんが配布しているカラオケ音源に自分の声をMIXしたサウンドは投稿していいの?」という疑問を持つ方がいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言うと、ボカロPさんが配布している音源を自身の声とMIXした音源であればnanaに投稿してよいケースはあります。
ポイントになるのが「曲の権利者本人にnanaでのミックス済み音源の投稿許可を貰うこと」です。
でもここでさらに疑問に思う方が出てくるのではないでしょうか。
「歌ってみた動画ってボカロPさんに許可を直接取らなくてもカラオケ音源を使っていいんじゃないの?」
「ピアプロに投稿されている曲なら使用報告をすれば、ニコニコ動画やYouTubeみたいなサイトにカラオケとして利用していいんじゃないの?」
これはその通りで、それがボカロ曲と歌ってみたの文化でもあります。
個々で規約を設けているボカロPさんもいらっしゃいますが、多くのボカロ曲のカラオケ音源は個人の非営利目的であれば許可などを取ることなく利用可能な場合が多いです。
「じゃあニコニコ動画やYouTubeに投稿しても大丈夫ならnanaに投稿してもいいよね?」となりますが、実はこれは正しいとは言えません。
nanaにはニコニコ動画やYouTubeにはない『コラボ機能』が存在します。
nanaのシステム上、すべての音源はコラボされる場合が想定されています。
逆に言うなら、nanaの中にコラボしてはいけない音源というものは決まりの上では存在しません。
つまり、MIX済み音源を投稿した場合も同様で、それにさらに重ねてコラボすることを阻むシステムが存在しないので、
nanaへのMIX済み音源の投稿=三次的創作を許している
と見なされてしまうのです。
つまり、nanaでMIX済みの歌ってみたを投稿するためには「三次創作として楽曲が使われる可能性がある “nanaのコラボ機能” をボカロPさんに理解してもらった上で、nanaへの投稿の許諾を得ることが最も望ましい」と言えるのです。
MIX済み音源を無断で投稿するのは違法行為なの?
これは非常に判断が難しい部分になります。
配布されているカラオケ音源を転載(二次配布)することはほぼ全てのボカロPさんが許可をされていませんから、これらを無断で投稿するのは違法行為と言えます。
しかしながら、「歌ってみた作品へのカラオケ音源の利用は可」「良識の範囲内でカラオケ音源を使っていい」という表記をされているボカロPさんは多いため、この部分だけで「nanaへMIX済みの歌ってみた音源を投稿するのは違法」と判断することも難しいです。
これ以上の部分は同様のニュアンスの利用規約の記述があったとしても、ボカロPさんによって見解が異なる場合があります。
nanaでの利用を許可しているボカロPさんの例
こちらはnanaにMIX済み音源の投稿を許可されているボカロPさんとのメールのやりとりになります。
カラオケ音源の転載ではなく、自身の声とカラオケ音源をMIXしたものを投稿したいという旨を正確に記述しましょう。
※上のメールでは、nanaのコラボ機能に関する説明をしていません。nanaのコラボ機能を知らないボカロPさんもいらっしゃるので、「自身が投稿したサウンドが他のユーザーに使用される可能性がある」ということも伝えるのがベストです。
nanaでの利用を許可していないボカロPさんの例
こちらは、ニコニコ動画やYouTubeでのMIX済み歌ってみた音源の投稿は許可しているけれども、nanaでは許可していないというボカロPさんの例になります。
このように同じ「歌ってみた作品へのカラオケ音源の使用は可能」というボカロPさんでも、nanaへの投稿となると許可していないという方がいらっしゃいます。
どうしても声とカラオケ音源をMIXしたボカロ曲のサウンドをnanaに投稿したい場合は?
- 原盤権がボカロPさん本人にあるか確認する
(上で説明しましたが、大手レーベルや音楽出版社が管理している場合は、個人に対して許可を出してくれる可能性はほとんどありません)
- ボカロPさんに、直接nanaでカラオケ音源を使用した歌ってみたサウンドを投稿してよいか聞く
- 権利者、原曲のURLをサウンドの説明欄に表記する
これらのステップをクリアしましょう。
まとめ
違法音源をnanaから無くすためには、それらの音源を投稿しないことはもちろん、コラボしないことも大切です。
ルールを守って楽しむことで、音楽の文化をより発展させることができます。
音楽が誕生する環境を整備することは、回り回ってかならず僕たちの利益になるはずです。
守ると得をするのは私たちです!
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